こんにちは、今日もニコニコ月給5万円(実話)のところてんです。取締役って労働時間の上限がないし、給与も支払わなくていいのでとっても便利ですね。
さて、今日は弊社がリリースしたVeinというソーシャルブックマークサービスについての紹介をします。実は11月の頭にはTwitterでリリースしたと書いていたんですが、大きなバグがいろいろとあったので、積極的にはアピールしていませんでした。
ようやくデカいバグが取れて、安定稼働状態に入ったので、今回はどういう目的でVeinを作ったのか、という話をします。
パッと見、RSSリーダー兼ソーシャルブックマークですが、他所とちょっと違うのは、Vein中のリンクを開くことで誰が何の記事を見たのかが分かるところにあります。
たったそれだけの話ですが、それだけの話で記事の共有はとても楽しくなりました。
雑談を生み出すソーシャルリーディング
ちょうど1年くら前にVeinを開発しているという話を書いたのですが、それから早いもので1年経ってしまいました。会社の運転資金を稼ぐために、出稼ぎに出ていると、なかなか開発もままならないものです。
Veinの機能は当時から大きく変わっておらず、大雑把な機能はこんな感じです。
- 読んだ記事が自動で投稿される、RSSリーダー 兼 ソーシャルリーディング
- ソーシャルブックマーク機能
- Slackのように企業ごとに空間を切れる
- 誰が何の記事を見たのか、記事に対して見た人のアイコンが付く
- スクリーンショットを加工して放り込める
- Slack等の各種社内向けチャットツールと連携
- Webフロントエンド、Chrome Extension、Android版 iPhone版クライアント
- botによるURL投稿が可能(API仕様書欲しい人は連絡くれ)
なんでこんなものを作ったかというと、リアルでの雑談を促進させるサービスが作りたかった、というものがあります。
転職や出稼ぎ労働を通じて、いろいろな組織を見てきましたが、高いパフォーマンスを発揮するチームは、リアルでの雑談が多かったり、そもそもその雑談のレベルが高かったりする、というのがあります。
逆に、これはどうかなと思える組織は、雑談そのものが無かったり、雑談の内容が下世話だったりしました。
Veinはそんなリアルでの雑談を促進させるための、グループソーシャルブックマークを目指して絶賛開発中です。
私の会社ではプロトタイプを含めて、1年以上ドッグフーディングを続けていますが、「昨日上げていた○○って記事、面白かったよね」といった雑談がよく起こっています。誰が何を知っているかが分かるから、雑談がはかどるのです。
暗黙知をシェアする
じゃあ、なんでこんなことを考えていたのかというと、念頭には野中侑次郎氏のSECIモデルがありました。
上記はVeinを作るにあたって、何を目指すのかを考えていたころのものです。SECIモデルは組織がどのようにノウハウを蓄積するのかを、人間の認知と、集団の認知を、暗黙知と形式知の二軸に分けて、それらがサイクルを描くことで、発展していくことを示したものです。SECIモデルについては以下の取材記事が分かりやすいかなと思います。
ではこれが現代社会でうまく回っているか?と考えたときに、暗黙知をメンバー間で共有する、Socializationのプロセスがうまく回っていないのではと考えました。
その昔は、PCを使って業務を行うことなどは極めて稀でした。そのため、仕事途中の資料を見ることができたり、社内で新聞や雑誌を読んでいたりすれば、だれが何に興味を持っていて、だれが何をインプットしているのか、というのはある程度分かったわけです。
現代はPCを活用した仕事が当たり前になり、プログラマはもとより、総務、経理、デザイナー、広報、設計、製造、etcの仕事はすべてPCの中に飲み込まれました。その結果、だれが何をしているのか極めて分かりづらくなり、アウトプットは最終成果物のみで、中間成果物や試行錯誤の過程はすべて個人のPCの中に眠ってしまっているのが現状です。
余談ですが、上記はとある大学での講義資料を作るにあたって調べていた、アニメで見るオフィス環境の変化です。80年代後半と、2018年のオフィスではこんなに違うよー、という話をしたくて、アニメやらドラマを調べていました。
さて、そんなわけで、すべての業務がPCの中に閉じてしまった結果、個人が行っている仕事がPCの外部に出てくることが少なくなり、結果として、暗黙知の共同化のプロセスがうまく回っていないんじゃないかと考えたわけです。
一方で、PCの出現で、Slackなどのチャットツールが台頭したわけですが、文字メディアで情報発信するのは、暗黙知から形式知への変換が必要であり、上手く言い表せない何かを共有する仕組みにはなっていないと考えています。
そのため、不足している「暗黙知の共同化」を実現するためには何をしたらいいのか考えたわけですが、いろいろと悩んだ結果、「インプットシェアリング」という概念に到達しました。下記記事はVeinのプロトタイプを作っていたころに書いたもので、当時はインプットシェアリングを「 ライフログの自動コンテンツ化」と表現していました。
インプットシェアリングからの雑談により、暗黙知の共同化がVeinが目指しているところになります。
雑談を生み出すインプットシェアリング
では雑談を生み出すにはどうしたらいいのかを考えると、共通の話題を持っていることが大事になります。たとえば、宝くじは最強のコミュニケーションツールだったりします。3000円で誰とでも10分間話ができるのであれば極めて安い買い物です。
似たようなところに、天気予報もあります。「イギリス人は天気の話題が好き」という言い回しがありますが、天気予報は誰とでも安全にコミュニケーションが取れるようになる万能のツールだからですね。
いろいろな会社でエンジニアを見てきましたが、中堅社員とジュニア社員で決定的に違うのがインプットの質だと考えています。できる人はまずインプットの傾向からして違うわけです。同僚となかなか話が通じないというケースは、根本にある知識を共有していないことから起こります。
じゃあ、既存のサービスを通じて、共通の話題を見つけることができ、雑談の糸口を作ることができるかと考えると、なかなかに難しいと考えています。共通の話題という観点で既存サービスを眺めてみましょう。
ニュースアプリケーション
ニュースには二つの価値があります。それは「最新の情報を知りたい」「人と共通の話題を得たい」という人がもつ根源的なニーズを満たすものです。
紙の時代は「最新の情報」を各社が追い求め、切磋琢磨していました。しかし、インターネットが発達した結果、「最新の情報」については、各社横並びになってしまいました。そして現在は「人と共通の話題を得たい」というニーズに対して、どのようなアプローチをとるか、という戦いになっています。
多くのニュースサイトでは「人と共通の話題を得たい」というニーズに対しては、だれもが理解できる、スポーツや下世話な芸能の話題、海外のゴシップの翻訳といったイエロージャーナリズム(≒東スポ)の方向にシフトしています。たとえば、SmartNewsのタブのデフォルト設定はこんな感じです。
スクリーンショットからもわかるように、「人と共通の話題を得たい」というニーズに対しては、より多くの人が興味を持つであろう安牌な記事を優先表示する、というのが各ニュースサービスの戦略となっています。
現在の各ニュースサービスは、「人と共通の話題を得たい」というユーザのニーズに対して、アクセス数を最大化するために最適化していった結果、イエロージャーナリズムになっているわけです。この状況は極めて不健全だと考えています。
そのため、Veinでは「人と共通の話題を得たい」というニーズに対して、「人が見た記事にアイコン(足跡)を付ける」というストレートな解決を行っています。
はてブ等のソーシャルブックマークツール
ソーシャルブックマークサービスがいつ頃誕生したかを調べてみると案外古く、deliciousが2003年、diggが2004年、はてブとredditが2005年でした(それより古いのもいくつかあったけど)。
15年前の当時は、ウェブ検索が貧弱だったので、有益だったウェブサイトはブックマークしておかねば二度と見つけることはできない、という問題がありました。そのため、そういった課題に対して、ソーシャルブックマークがうまく適合して広まっていった、と記憶しています。
また、ブログブームと合わせて、ブログで引用して言及するほどじゃないけど、コメントしたい、というニーズにも答えていたように思います。
それが十数年経ってみてどうかというと、検索エンジンの発達、TwitterやFacebookの登場により、「もう一度探したい」「簡単なコメントを付けたい」という2つのニーズは消え失せてしまいまい、今となっては「安全圏から石を投げるツール」となってしまいました。
また、各種ソーシャルブックマークサービスは、基本的にオープンであり投稿に際して心理的安全性が担保されないという問題があります。そのため、心理的安全性を担保するために、企業内で使うために、クローズドなソーシャルブックマークサービスが求められていると考えています。
ちょうど10年前にはこの辺を目指したBuzzurl PLUSがありましたが、時代の波にのまれて消えてしまいました。
10年前と今とでは、モバイル環境の普及や、インターネットネイティブが働き始めたりと、色々と状況が変わってきていると思っています。そういった流れの中で、「モバイル最適化」「Slack等の他のメディアとの連携」を主軸に置いたVeinは当時とはまた違った評価がされるんじゃないかと考えています。
Slack等のチャットツール
色々な会社にURLを張り付ける雑談部屋がありますが、過去の記事を掘り返すのが大変だったり、誰がどの記事を見たのかが分からないため、リアルでの雑談に繋がらないといった問題があります。
中堅社員が会社のボトムアップを願って頑張ってURLを放りこみ続ける光景はよく見ますが、フィードバックが無かったり、周囲から手抜きだとみられてしまい、心が折れてしまうのもまたよく見る光景です。
自分の取引先のある会社では、各自のアイコンをカスタム絵文字に登録していて、投稿されたリンクを読んだら自分のアイコンのカスタム絵文字を手動で付ける、という根性運用をしている会社もあります。
また、Slackは記事に対していくらでも長文が付けられるため、コメントも付けずURLだけを放りこむ人は手抜きだとみなされる傾向にあります。私の持論として「リッチに書けるメディアは、そのメディアの機能を十分に使わない限り、手抜き扱いされる」というものがあります。
たとえば社内Wikiは、Wikiの機能を十二分に使わないと手抜きと見なされてしまうため、書くのに難儀してしまい、いつしか使われなくなってしまうことがよくあります。
また、Wiki記法の学習コストが極めて高く、難しいから使わないという人が現れ、書く人と書かない人に分かれてしまい、組織が二分されてしまいます。その結果、esaやKibela、Scrapboxといった機能制限されたWiki風のサービスが再発明されるわけです。
そのためVeinでは次の方針で上記問題の解決をはかっています。
- 長文は書き残しにくくする
- スクリーンショットでの引用言及+マーカーで投稿ハードルを下げる
- 既読者のアイコンを自動で付与する
- Fav付きかどうかで記事にウェイトを付ける
実際に使っている例としてはこんな感じ
想定するユースケース
現状で想定するユースケースとしては、おもに企業と大学の研究室の二つがあります。
企業内
企業内では、中堅社員がVeinのRSSリーダー機能を活用し、自分が日々インプットしている情報をVein上に乗せ、同僚に共有した状態を作ります。
そして、ジュニア社員は中堅社員のインプットした情報や、自分が面白いと思ったサイトを別途投稿するという使い方を想定しています。
個人的には、人間の成長の動機のうちのいくつかは、憧れからくる同質化欲求だと考えています。そのため、Veinでは同質化欲求がなるべく満たせるようにアイコンを並べるようにしています。
このほかにも、同僚の興味や関心をVeinを通じて掴みやすくする、というのもあります。例えば、テストで利用していただいている某Nさん(以下のスクリーンショットの緑アイコン)は、Chrome Extensionに試験的に実装してあるオートポスト機能を用いて、自分が閲覧したWikipediaの記事を全部投稿、という使い方をしています。
Nさんが最近何を考えているのか、どのようなことに興味を持っているのか、次はどのようなことをしていきたいのか、というのがWikipediaの記事を通じて理解でき、非常に面白い使い方になっています。
このほかにも、自分の会社の顧問税理士の会社から、「税制の法改正や、税に関する判例を日々取集して、社内で共有しているので、それらの知識共有のためにVeinを使いたい」という話を貰っていたりします。現状のVeinは、税理士事務所や法律事務所といった、日々の知識更新が重要である職業と相性がよいのではないかと考えています。
大学の研究室
このほかにも、大学の研究室で自分が読んだ論文を放り込んでいく、という使い方もできるかと思います。これにより同じ研究室内で誰が何を読んだのか、Fav機能によりどの論文が良かった、というのを簡単に表すことができます。論文サーベイを個人の行為から、集団の行為にしたい、というのがあります。
これは自分が実際にVeinを活用した話ですが、ある企業から業界サーベイレポートの依頼を受けた際に、Vein上で情報収集を行い、後でそれを再度まとめて報告しました。
VeinにはTwitterやInstagramと似たタグ機能があるので、タグ機能で特定の案件についてタグを打っておいて、後からそのタグの付いた記事をまとめて引っ張ってくることで、サーベイレポートの完成です。
記事検索機能やタグ機能は、まだ解放していないですが、近いうちに実装される予定です。
まとめ
- Veinってサービスを作ったよ
- SECIモデルにおける、暗黙知の共有をコンセプトにして、雑談促進を目的につくってるよ
- グループ向け、RSSリーダー兼ソーシャルブックマーク
- サービス内からは、誰が何を見たのかの情報を残せるサービス
Veinを自分の部署で使ってみたいという方や、テスター部屋で遊んでみたいという方、Botに投稿させたいからAPI仕様書くれという方、ご連絡をお待ちしております。
無料で使えるので、上記リンクからSIGN UPを選んで、新しいスペースを作ってみてください。同僚のInviteはgeneral settingsからinvite linkを発行することで、行うことができます。