できるビジネスパーソンは「最適化」という言葉を使わない

ところてん
6 min readJun 14, 2020

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お久しぶりです、怪文書職人のところてんです。「できる社長は長財布を使う」みたいな、そういう感じの意味不明な怪しい文章を書いてみたくなったので、久しぶりに筆を執った次第です。

さて、だいたい上記のツイートで完結していて、あんまり書くことはないわけですが、ぼちぼち書いていきましょう。

「最適化」という思考停止ワード

「最適化」という言葉は、営業職やマーケターの間では「検索エンジン最適化(SEO)」や「ランディングページ最適化(LPO)」といった、『名詞+最適化』という使われ方がなされることが多々あります。

このほかにも「メール最適化」「物流最適化」「ネットワーク最適化」などなど、「ナントカ最適化」は枚挙に暇がありません。

「最適化」という言葉は耳ざわりがいいので、つい使ってしまいます。あなたの所属する会社の事業紹介にも「ナントカ最適化」が載っているかもしれません。詳細に話しても理解してもらえないお客さんには「ナントカ最適化」という言葉で納得してもらうしかないでしょう。「最適化」という言葉は非常に耳ざわりが良いので、その言葉を使っているだけで何か仕事をした気になってしまいます。

しかし単なる「最適化」では、「何をどうするのか?」という意味が欠落してしまっています。そのため、そこで使われる「最適化」には「いい感じにする」「頑張ります」以上の意味合いはない、思考停止ワードになってしまっています。

本当の意味の最適化

一方で『最適化』という言葉はエンジニアやサイエンティストの間では、『最適化問題』として使われます。

最適化問題は、ある前提条件、制約条件が与えられたときに、目的関数を通じて得られた目的変数を最大化、もしくは最小化する問題として定義されます。今はやりの機械学習なんかもコレの一種です。

そのため、営業職やマーケターの使う「最適化」と、エンジニアやサイエンティストが使う「最適化」は全く別の言葉になってしまっています。

その結果として、ビジネスの現場では残念がすれ違いが多く発生してしまっています(実体験、後述)。

言葉には気をつけなさい、それはいつか思考になるから

もしあなたがエンジニアやサイエンティストではないなら、「最適化」という言葉を使うことをやめ、「最大化」や「最小化」という言葉に置き換えましょう。すると、隠れた前提条件や、目的変数を見つけ出し、その前提条件や目的変数をどのようにしたいのか、ということを考えることができるようになります。

「検索エンジン最適化」とは言うけれども、「検索エンジン最大化」とは言いません。ということは、そこには隠れた前提条件や目的変数があるとわかるわけです。言葉を置き換えてあげるだけで、それらを正しく書かないと座りが悪い文章になるため、必然的に考えることになります。

「検索エンジン最大化」は「ウェブページの構造やデザイン、メタ情報を改善することで、検索エンジンからの流入を最大化させる」と言い換えられるかもしれません。こう言い換えるだけで、自分たちが何の数字を気にしていて、どのようなことをするとその数字を変化させられるのか、ということが分かってきます。

「メール最大化」は「顧客セグメント事に別々の内容のメールを送付し、メールの開封率を最大化させ、メール経由コンバージョンを増加させる」と言い換えられるかもしれません。これだけで何をすべきかがだいぶ明確化しました。

「最大化」「最小化」という言葉に置き換えるだけで、数値計測可能な目的変数は何で、それを実現するためにどのような前提条件が存在するのかを考えることができ、問題がクリアになっていきます。

すれちがう二人

以下は私が体験した、おつらみ事例です。

「会社のロードマップで『○○最適化』をやることになってるんでやってください」

「えーと、その『○○最適化』というのは、『AAAを維持したままXXXの最大化』と『従量課金の概念を入れたうえでのYYYの最小化』と『BBBの条件を保ったままのZZZの最小化』の三つの問題に分解すれば解けると思うけど、どの順にやっていったらいい?」

「いや、ロードマップに乗っている『○○最適化』をやってほしいんです」

「だから『○○最適化』は直接は解けなくて、分解する必要が…(ダメだこいつ、会社を信奉するあまりロードマップが宗教化していて、分解して考えるのを放棄している)」

まとめ

「最適化」以外にも世の中には様々な思考停止ワードが存在しています。たとえば「効率化」「能率化」「イノベーション」「アップデート」「改革」「改善」「全体最適」「チューニング」なんかがそうです。

これらの言葉は耳ざわりがとても良いので、使っているだけで仕事をした気分になってしまいます。しかし、これらの言葉は、数字的な方向性を持たず「いい感じに何とかする」程度の意味合いしか持ちません。

人間は怠惰です。そして脳も怠惰です。難しいことを考えたくありません。放っておくとどんどん考えない方向に『最適化』していってしまいます。でも考えなくてはいけません。「最適化」を「最大化」「最小化」に置き換えることで、そうした思考的サボタージュを意識的に防ぐことができます。

Amazonではさらに踏み込んで、「形容詞は避けて、データで置き換える」といったライティングの指導が行われているようです。

Amazonのライティングのように数字(実験結果)で示すことはなかなか難しいので、まずは「最適化」を「最大化」「最小化」に置き換えていきましょう。そうすることで、前提条件や制約条件が何で、どのようなことをすると、目的変数が得られるのか、というところに注意を払えるようになります。

それが出来るだけで、エンジニアやサイエンティストと正しく話ができるようになります。

できるビジネスパーソンは「最適化」という言葉を使わない、使う場合は制約条件と目的変数をきっちり抑えている。

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